自分には音楽的な才能が全くありません。
いわゆる音痴で、小学生時代には通知表に「ピアノの音に合わせて歌いましょう」と書かれたぐらいです。
リズム感もまるでなく、手拍子とかですら直ぐに裏打ちになってしまいます。
にもかかわらず、人並みに楽器を演奏してみたいという気持ちはありました。
しかし、楽器を習わせてもらうような経済的な余裕はなかったので、幼稚園では演奏会でのカスタネット、小学校では音楽の授業で使うハーモニカとリコーダーぐらいしか触ったことがありませんでした。
そんな中、近所に住んでいたお兄さんがギターを弾いていたので、それに憧れ、中学に入ってから小遣いを貯めて、安物のフォークギターを買いました。
しかし買ったはいいものの、全く弾けませんでした。弾けないというか、そもそもその前の段階のチューニングができませんでした。
はじめは代わりにチューニングをしてくれていた近所のお兄さんも、そのうちに相手にしてくれなくなりました。
自分には、どうしても音叉を使ってのチューニングなどできず、ピッチパイプを使ってもできませんでした。
それで、せっかく買ったフォークギターも数週間で置物になってしまいました。
それから一年ぐらいしてから、さすがに置物のままにしておくのはもったいないと思い直し、再度フォークギターに挑戦しました。
たまたま本屋で見つけたフォークギターの初心者用教則本に、演奏用の曲のほかにチューニング用の各弦の音も入ったレコードが付いていました。
このレコードの音を使って何とか自分なりにチューニングをして(おそらく正確なチューニングはできていませんでした)、課題曲を練習しました。
また、弦を初心者でも押さえやすい、軽いコンパウンドという種類の弦に変えました。
そのうえで根気強くやったところ、数曲の曲を何とか弾けるようになりました。
一番の進歩は、ストローク奏法だけでなく、アルペジオ奏法やスリーフィンガー奏法ができるようになったことでした。
しかし、それ以上に上達することはなく、ほんの少し弾けただけで満足して、弾くのをやめてしまいました。

そして、時は流れ、高校に入って、たまたまベースギターを入手しました。
これも欲しくて入手したのではなく、先輩からほとんど押売のような形で押しつけられました。
当然ながら自分が扱えるわけもなく、これもすぐに置物と化してしまいました。
ところが、3年生になって、自分がベースギターを所有しているということを聞きつけた同級生からバンドをやるのでメンバーになるよう誘われました。
正直に弾けないと申告したのですが、持っているだけで十分で、あとは練習すれば良いと言って、強引にメンバーにされました。
こうして、なかば無理矢理、バンドのメンバーにされてしまったのですが、音楽的な才能がゼロの自分にできるわけはないので、そのうちに他のメンバーも諦めてくれるだろうと高をくくっていました。
そうして迎えたスタジオでの初回の練習は悲惨なものでした。
事前にハードロックの曲の楽譜を渡されていたのですが、ちんぷんかんぷんでまともな練習などせずに臨みました。
ここでも、まずはチューニングができませんでした。
他のメンバーからAの音を出すので、それでチューニングをしろと言われましたが、そんなことができるわけがありません。
結局、見学に来ていたベースギターを弾ける友人が代わりに演奏してくれたので、スタジオでの練習を全くの無駄に終わらせることだけは回避できました。
さすがに、これで他のメンバーは諦めて、別のベースギター担当を探してくれるだろうと思ったのですが、何故かそうはなりませんでした。
チューニングについては、チューニングマシーンを買うように言われ、とにかく練習をするように求められました。
そして、高校の学園祭でのライブハウスやオープンステージでの演奏に参加することまで決められてしまいました。
今から思うと、それはすごくラッキーなことだっのですが、自分にとっては拷問のようなものでした。
チューニングマシーンを買って、いやいやながら練習もして、何とか最低限の演奏ぐらいはできるようになりました。人前で演奏するにはあまりに下手すぎたのですが、それでも恥を忍んでステージには立ちました。
そして、なんやかんや言いながらも、大学の1年生まではバンドを続けました。
その後は、楽器を演奏することはなかったのですが、人生とは分からないもので、資格試験合格後に研修仲間たちに誘われてまたバンドをすることになりました。
さらに、50歳を迎えたころに、このバンドを再結成することになり、コロナ禍前まで活動しました。
生意気にもライブハウスでのライブに参加させてもらうなどしていました。
しかし、コロナ禍により活動は無期限休止のようになり、また楽器演奏から離れました。
そして、リタイア生活も3年目に入り、もう一度だけベースギターに挑戦してみたい気持ちが出てきています。さきほど、チューニングを済ませました。
相変わらず音楽的な才能はゼロなのですが、自分が楽しむための演奏ならこれからでもできそうな気がしています。
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