『スマホ脳』

読書

ここのところ何度か大型書店に行った際に、『サピエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリさんの新刊「NEXUS 情報の人類史」を手に取って、パラパラと立ち読みをしました。
Amazonランキングでベストセラー1位になっており、『サピエンス全史」なども読んでいたので、興味があったからです。
しかし、残念ながら個人的には、『サピエンス全史』を超えるような目新しさは感じられず、図書館に入ったら借りて読んでみようかなという感じでした。

そして、この本と直接の関連書ではないのですが、何故か自宅にあった『スマホ脳』を読み返したくなり、一気に読んでしまいました。
5年くらい前に出た本なのですが、はじめて読んだときほどの衝撃はないものの、今でも十分に楽しんで読める内容でした。
ということで、今回は、まだ読んでいない方もおられるかもしれないと思うので、『スマホ脳」の紹介です。

著者はアンデシュ・ハンセンさんというスウェーデン精神科医です。
私たち人間の脳は、狩猟採取の時代から進化しておらず、未だに「生き延びて、遺伝子を残す」ことを基本ルールとして機能しているというスタンスから、この脳には適応困難スマートフォンSNSが脳に与える悪影響などついて述べられています。
著者の主張にはエビデンスのないものも多いので、書かれている内容を丸々信用することはできませんが、なかなかセンセーショナルな内容なので、これが世界的ベストセラーになったのも頷けます。

個人的に面白いと思ったのは、スティーブ・ジョブズさんを筆頭にビル・ゲイツさんなどIT業界のトップたちが、自分の子供にはデジタルデバイスの使用を制限していたという点がまず挙げられます。
これについては、他の本などでも述べられている内容ので、おそらく事実なのであろうと思います。
スマートフォンやSNSを開発した人たちは、それらが人間脳に与える影響を理解していたからだという主張には説得力があります。

あとは、脳内のドーパミンは、新しい経験そのものではなく、それに対する期待、何かが起こるかもしれないという期待をしたときに分泌されるものであり、しかもドーパミンは、脳に快楽を与える報酬物質ではなく、人間に行動する動機を与えるものだという主張です。
これは、ドーパミンをエンドルフィンと同じ脳内で分泌される快楽物質(いわゆる脳内麻薬)だと思っていた自分にとっては新しい考え方でした。

さらに、これは他でも読んだことがありましたが、脳は脅威そのものに対してはストレスを感じ、脅威になり得るものに対しては不安を感じる。そして、脳はいずれの場合にも、身体に「闘争か逃走か」を備えさせるという主張です。
脳には、現実に起こっていることと、起こるかもしれないと考えているだけのこととを区別できないというのは、良く言われていることなので、この主張もそれをストレス不安という振り分けの中で論じることで成り立ち得る主張なのだなと思いました。

最後は、脳が処理できる人間の情報は、MAX150人分までで、この数がダンパー数と呼ばれていることです。
これについては、『サピエンス全史』などでも述べられている、人類がこれまでに作ってきた集団の最大人数と考えられている数字と一致するのものなので、個人的には信用することができました。
そして、この数字を遙かに超える人数と繋がろうとするSNSの脅威というものを感じずにはいられませんでした。

全体的に見て、内容的には5年前に刊行された本なので、少し古くなってしまっている点もありますが、それでも示唆に富んだ内容が盛り沢山だと思うので、まだ読んでいない方には是非お勧めの一冊です。

『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン著


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